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国内外に、すしや和食、日本酒の魅力を伝える「登喜和鮨」三代目・小林宏輔さんが握る「新潟ならではのすし」

時を継ぎ、未来を醸す。「節五郎出品酒」03
国内外に、しや和食、本酒の魅力を伝える 登喜和鮨 ときわずし
三代目・小林宏輔さんが握る新潟ならではのすし」

全国新酒鑑評会の金賞受賞を目指して醸した酒を商品化する。それも酒米違いの3種を――これは菊水酒造の新たな挑戦です。酒造りを担当した蔵人の五十嵐雄太と阿部裕一が語る3種類それぞれの味の特徴と味わい方をご紹介します。

食材は9割以上が新潟県産。
世界の食通を唸らせる「唯一無二のすし」

「登喜和鮨」は約70年前の創業以来、菊水酒造の酒を提供してきた新発田市の老舗すし店。小林さんが三代目となってから、新潟の地魚と旬の新潟県産食材を生かした料理とすしに力を入れてきました。小林さんのオリジナリティあふれるすしは、2020年に世界的レストランガイドで一つ星を獲得するほどのクオリティ。
国内だけでなく海外からもこの店を目指して客が訪れる人気店です。

春はサクラマス、夏はマグロ、ノドグロ、秋はカマス、サワラ、冬はブリ、カニなど。地元里山の山菜や新発田市特産のアスパラガスと山芋、新潟県産茶豆など野菜のほか果物も、新潟で採れない時期は提供しないという徹底ぶりで、店で使う食材は9割以上が新潟県産です。地獲れのイワシを発酵させて魚醤を作ったり、柿で柿酢を手作りしたりと、細部まで自家製を心掛けています。

酢飯にもこだわり、新発田市内で生産される希少なコシヒカリの改良種「豊(ゆたか)コシヒカリ」を羽釜で炊いて使用。「粒が大きく硬めで、噛めば噛むほど味が出て、しかも粘らない。すしの酢飯に最適なんです。このコメとの出合いは、うちのすしを進化させる契機になりました。握りにするとネタに負けない存在感を放ち、コメの旨味もしっかりと感じられます」と小林さん。酢飯の酢は村上市岩船で醸造された「岩船酢」、水は新発田市赤谷「景勝清水」の湧水。選び抜かれた新潟の食材が、小林さんの手で「登喜和鮨」でしか食べられない逸品として提供され、世界から訪れるお客さまを喜ばせています。

千社額
初代が店舗を改装した際に、
当時の寿司組合の方から贈られたという千社額

二代目の「お客さま第一主義」を受け継ぎ、
変化を恐れず、挑戦を続ける

食材の特長を活用し、洗練されたすしに昇華させるべく、世界の店を食べ歩いてアイデアを探す小林さん。 「異文化の料理の考え方をヒントにすることもありますね」。店のスタッフとのディスカッションから生まれる料理もあるとか。

幼いころから店で仕事をする両親を見て、学校が休みの日には仕込みや接客を手伝った経験が、「カウンター越しにお客さまと自然に会話をすることに役立っている」と言う小林さんは、何より「二代目の父から学んだことは多かった」と振り返ります。

二代目の小林登三男さんは「お客さま第一主義」を掲げ、常に「すし屋のセオリーを優先するのではなく、お客さまにとっての『おいしい』を優先する」と考え、形にしていました。野菜だけの巻きずしや、ノドグロの皮をあぶってすしにするなど、当時は型破りと言われる料理もメニューに取り入れていたそうです。

「すし屋という軸をしっかりと持ちながら、現状に甘んじることなく、従来のやり方に固執もせず、柔軟に、変化することを恐れない。そういう父が身近にいたことが、すし職人として、店の経営者としての自分に大きく影響しています」

新発田店の改装、新潟店出店、完全予約制で食事は一斉スタートのお任せコースのみにするなど、この10年間でハードとシステムを次々と改革しながら、にぎり一貫に込める思いはぶれずに、真摯に味を追求してきました。二代目から受け継いだスピリットは三代目・小林さんの仕事を今も後押ししています。

菊水酒造のクリエイティブな酒造りは
「登喜和鮨」のあり方にも通じる

職人が素手で魚とコメをにぎり、客も素手で食べるすしは、
日本の食文化の一つとして世界中に知られています。

「コメ、酢、魚で構成されたシンプルな食べ物。穀物の甘み、酸味と塩味、魚の旨味が絶妙のバランスで組み合わさり、その時、その瞬間にしか味わえない奥深さがある。現代のハレの日の料理として、これほどふさわしいものはありません」

すしと好相性の飲み物として世界のグルメを魅了する日本酒。「魚臭さを消し、旨味を膨らませ、酸味で味を補完してくれる酒もあります」と小林さんは語ります。地元食材にこだわったすしなら、その土地で醸された酒と共に味わいたいもの。「登喜和鮨」は菊水酒造の酒をはじめ、新潟の地酒をお客さまに特に勧めています。 菊水酒造は1881年の創業から培ってきた技術を基に、杜氏制の廃止、最新設備の積極的な導入、詳細なデータを駆使した酒造り、独自の「日本酒文化研究所」の設立など、挑戦を続けてきました。現在は大型仕込みの施設「二王子蔵(にのうじぐら)」と、手仕込みで酒を醸造し、伝統技術の継承と発展を目指す「節五郎蔵(せつごろうぐら)」の二つの蔵から、既成概念にとらわれない日本酒造りに挑んでいます。

創造性あふれる菊水酒造の酒造りは、江戸前すしの技を核にしながら革新を続ける「登喜和鮨」と通じ合っていると言えるでしょう。

三代目・小林宏輔さん
登喜和鮨 三代目
小林宏輔さん

1979年、新潟県新発田市で「登喜和鮨」を営む家に生まれる。地元高校卒業後、東京の調理師専門学校へ。その後は東京都内の和食店やすし店で修業。2010年に「登喜和鮨」を継承し、地元食材に徹底的にこだわりぬいた店へと革新を進め、国内だけでなく海外でも高く評価される。2024年、新潟市内に新潟店を出店。国内外で日本酒関連のコラボ企画にも積極的に参加し、すし、和食と日本酒の魅力を幅広く伝えている

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