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蔵光ヴィンテージ(2017BY)酒器や温度で日本酒を愉しむ

蔵光ヴィンテージ(2017BY)
酒器や温度で日本酒を愉しむ

酒器や温度で日本酒のおいしさ・魅力を伝える酒番 多田正樹

『蔵光ヴィンテージ(2017BY)』の魅力を最大限に引き出す温度とは?そして、使うべき酒器とは?日本酒と酒器について豊富な知識を持ち、酒番(さけばん)としても名高い多田正樹氏は「その組み合わせに無限の可能性を感じる」と言います。

上品さを纏ったバランスのよさが大いなる魅力

ファーストインプレッションは、何より上品であることです。『無冠帝』とも『菊水ふなぐち』とも違ったベクトルのお酒であり、いい意味でこれまでの菊水酒造のお酒のイメージを裏切ってくれました。

吟醸香のボリューム感は抑えられているため、お酒単体で味わうのはもちろん、食中酒として幅広いジャンルの料理とのペアリングが期待できます。口当たりから喉越しまで滑るようにきめ細かく、落ち着いた佇まいの中にラグジュアリー感が漂っています。

香りは多彩ですが何かの要素が突出しているわけではなく、絶妙に均衡がとれている。最初の飲み口は和三盆のような甘みが広がり、追従する研がれた米の旨みは極めて柔らかい。そして、丸みを帯びた酸味も、お酒全体の輪郭を形成するうえで最小限にとどめられていて、格上の吟醸酒として繊細に仕上がっています。

温度を変えながら、ゆっくりと飲む時間こそが豊かな日常

『蔵光ヴィンテージ(2017BY)』は冷酒の状態では熟成のニュアンスが前に出ることはありません。15~16℃あたりを起点に徐々に香りと味わいの両方で、全体の奥行きが増していくのを感じていただけるはずです。それは喩えるなら、研げた鉋(かんな)で少しずつ面を取るが如く、かすかで繊細な時間の蓄積が伝わってくるような感覚です。

そして、お燗(42℃程度)にすると、『蔵光ヴィンテージ(2017BY)』の新たなる一面が見えてくるのです。それはフレッシュな林檎がアップルパイになるようなイメージ。香りの開き方が想像以上に素晴らしく、口の中全体に上品な甘みが一気に広がっていき、少しの余韻を残しながらきれいに消えていくのです。そして、もうひとつ。圧倒的に違うのは旨みが倍増することです。これまで「大吟醸酒をお燗するなんてもったいない!」と言われてきましたが、それは日本酒の楽しみ方をひとつ減らしてしまうというのが私の考え。 『蔵光ヴィンテージ(2017BY)』は、お燗をすることでもおいしさの変化を愉しむ事ができるお酒です。

日々の暮らしのなかで、私たちにはそれぞれ大切な人と過ごす大切な日があります。そんな特別な日の食卓に冷酒で乾杯をして、おいしい料理とともに常温、そしてお燗という順番で時間をかけて味わう――そんな場面がとてもよく似合うお酒だと思います。

飲む温度によって酒器を変えることでおいしさが増す

8~12℃の締まりのある冷酒では『蔵光ヴィンテージ(2017BY)』の持つ和三盆的な甘みを最大限に引き出し、それを積極的に味わっていただきたいです。そこで酒器には、同じく新潟県の村上地域の伝統的工芸品である村上木彫堆朱のぐい呑[写真 左下]をチョイス。このお酒の上品な甘みと凝縮感をダイレクトに感じていただくためには、輪なりの形状でやや厚い口作りの漆器が最適です。舌先で感じた甘みはゆっくりと奥に流れていきます。独特の朱色は見た目にも美しく、大切な日にふさわしい特別感があります。

常温から42℃くらいのぬる燗では、このお酒の持つ多層の甘さと旨み、熟成感が出現し太い味わいとなります。平たい形状で口縁の薄い三川内焼(みかわちやき)の菊飾丸盃[写真 中央下]は、口中でお酒が横方向に流れ、酸を感じやすくなります。酸味を明確にさせることで、お酒全体のバランスが整えられ、温度の上昇によって生まれた味のふくよかさが伝わってくるのです。

酒器のご紹介

写真 左下 村上木彫堆朱のぐい呑

商品名:村上木彫堆朱 朱器 ぐい呑み「水引」
製造元:村上堆朱事業協同組合

写真 中央下 菊飾丸盃

商品名:三川内焼 菊飾丸杯
製造元:三川内焼窯元 平戸洸祥団右ヱ門窯
販売元:菊水酒造株式会社

大切な人と過ごす特別な時間を演出してくれる

一般的に純米大吟醸酒は華々しく、きらびやかなシーンが似合うと言われます。
『蔵光ヴィンテージ(2017BY)』も純米大吟醸酒であり、価格も含めてプレミアムなクラスのお酒です。ですが、このお酒にはつつましさと品のよさがあるのです。そこに唯一無二の美学を感じますし、蔵人たちの魂を感じるのです。ゆえに、これまであらゆるお酒を飲んできた方、本当の意味で日本酒を愛している方のためのお酒なのだと思います。

温度帯や酒器、そして合わせる料理で『蔵光ヴィンテージ(2017BY)』のおいしさの可能性は無限に広がります。それを試していくことで今まで知らなかった日本酒のおいしさを発見できるはずですし、そんな時間こそ心が豊かになる暮らしのワンシーンなのだと思うのです。

日本酒スペシャリスト / 酒番(さけばん)
多田正樹Masaki Tada

日本酒、そして酒器について豊富な知識を持ち、特に燗酒のおいしさ・魅力を伝えることに注力する日本酒のスペシャリスト。酒番(さけばん)として、さまざまな店舗やイベントなどで料理とお酒、お酒と器の美しいマリアージュを届ける。また、店舗設計から内装、お酒のラインナップに至るまで料飲店の開業支援コンサルティングも行う。

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